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2008年4月15日にドイツのマックスプランク脳科学研究所から注目される研究発表があった。それによると我々の決断は意識して決断しているようであるが、実はその7秒も前から無意識脳からの信号が発射されていて決断が予測できると言うものであった。我々の決断には実は無意識がその前に働いていたと言う注目ある発表であった。 私が何故この研究を取上げるかは、神経症が治った後の健康世界を良く説明しているからである。神経症の世界ではおよそ総ての行動の前に決断を要する。あらゆる動作を意識的に処理するようになったとすると、それは容易な事態ではない。簡単な動作にも大変なエネルギーを必要とするし、決断に時間がかかり、しかも間違った決断する。決断に膨大なエネルギーを消耗するから他の情報処理が追いつかなくなり生活の質が悪化する。更に問題なのは脳に不健康な力が加わるから鬱状態を引き起こす。鬱状態では我々は自信を失い、この先人生は総て闇だの観念が突っ走って我々の生活は立ち往生する。 私が神経症が治って一番感じるのは不安がなくなったばかりでなく、決定に際して意識が妨害しなくなったことである。何の動作をするにも意思決定のわずらわしさがなく、考える前に何かをしている。言わば、飛行機で言えば巡航状態でパイロットがコーヒーを入れるオートパイロットの状態と言って良いでしょう。これは脳の合理性を考えると当たり前で、例えば我々は沢山の雑音に囲まれながら生活をしているが、人と会話する時は相手の声以外は大幅に消去されていて雑音は余り問題にならない。この現象を確認したければ録音をしてみると分かる。録音からは邪魔な音が幅を利かせて相手の声が大変聞き難くなっている。 我々の脳はあらゆる動作を開始する時に、それに邪魔になるシグナルを選別消去している。これにより動作に伴う無駄なエネルギー消費を抑制して迅速な動作を可能にしている。健康な脳では机の引き出しの一つだけを選別して情報を取り出すのに対して、神経症の脳では机の引き出しを総て開いてしまった状態であろう。これでは困るから森田療法では迷った時にはどの引き出しを開けなさいと指示したが、これは2重の意味で間違っていた。先ず第三者は何が実際起きているか認識していないから開ける引き出しを指示できない事と、決断に際して意識を動員することを要求した事である。 我々は決断に際して意外と意志は必要としていないのだ。余ほどの決断、例えば大学の選択、巨額の買い物等の極めて重大な決断以外は我々は無意識で決断している。結果的に意思が働いているようでもその数秒前から無意識の脳が活動していて、その活動から決断が予測できると上の研究でも発表している。私が言う無意識はフロイトの無意識とは大きく違うが、我々の脳活動のかなりの部分が無意識の活動ではないかと私は最近見ている。健康世界とはこの無意識脳が十分に働いている状態であるのに対して、神経症世界とは意識脳が過剰に反応していて、意識地獄になった世界と言ってもよさそうだ。 ホームページへ |