十代の脳を探る

ニューズウィーク誌 2000年2月28日号



若者が乱暴な事をやるのはホルモンの性ばかりで無い。灰色の器官即ち脳が子供とも大人とも違う。


シャロン・ベグリー

皆さんは次ぎのような人類をご存知でありましょう。それは馬鹿らしい間違いをしたり数分先の計画が立てられない、親の顔つきから何を親が考えているか判断できない、自己コントロールが難しい、複数の仕事を実行しようとすると上手く処理出来ない、あたかもホルモンで考えて脳で考えて無いように思える人類を。 これを十代人類と呼びます。

若者の心については色々書かれてはいるが何故思春期かあるいは思春期を終わったばかりの子はそれ程違っているかは分かっていなかった。活発に分泌されるホルモンとか反抗期特有の現象にするのは簡単である。だが若者の脳が違っていると考えても間違いが無いのが最近分かって来た。今までは基本的な脳内配線の完了は3歳で8歳から12歳で脳は完成されると考えられて来たが実際はそうでなく脳は止む事の無い建設成長器官であると分かって来た。

アメリカ国家精神衛生局のジェイ・ギード氏によれば「脳の成熟は10歳では完了しない。10代全般に渡り更に20代でも成長する。驚いた事に脳灰色物質の過剰生産は今まで考えられていたように生まれて1歳半の時だけでなく人生にもう一度起きる」

脳は5歳かそこらで大人の脳の体積の95%に達する。この簡単な説明に挑戦するために1990年代の初めにギード氏と共同研究者は健康な子供たちを集めて2年ごとに脳内の写真=核磁気共鳴写真(MRI)を取りはじめた。驚くような発見は昨年の5月にあった。 Corpus Callosum と呼ばれる脳の左と右の半球を繋ぐ神経の軸索が20代になってもまだ成長を続けていたのである。コーパスカロッサムが未成熟だとどう言う効果があるか分かってないが、この部分は簡単に言えば知能、意識、自己認識をつかさどる所と考えられている。

今まで分かっているところでは子供、青年の灰色物質=脳は年と共に減る傾向にある。理由は使わない部分は脱落して行くと説明されている。使われない神経単位同士の連結は次第に消えて行く。このプロセスを剪定、刈り取りプロセスと呼ぶ。だがカリフォルニア大学の脳イメージ研究室のエリザベス・ソーウエル氏によると話しはそれほど簡単でない。博士は核磁気写真で12歳から16歳までの未成年の脳と20代の脳を比較した。博士が発見した事は十代の子供を持つ親、あるいは今十代である本人そして十代を思い出している人にはごく当然の事に見える。

前頭葉と呼ばれる部分即ち自己コントロール、判断、感情の調節、考えの構築、計画を実行する器官と考えられている部分が未成年期から若い大人に書けて大きく変化するのであった。前頭葉は10才から12才にかけて目に見えるように発達し(女子は男子より速めにそれが訪れる)20代に入ると萎んでくる。その時は要らない神経の連結は刈り取られ効率の良い上手く編成された回路に収斂していく過程である。ギード氏は4歳から20歳までの健康な人の145人分のMRIの写真を検査して11歳から12歳の間は前頭葉の灰色物質は増加しているのを発見した。しかしその後明らかな後退があった。あたかも思春期に第2の灰色脳物質の生産があるように思える。多分刈り取りの後に新しい連結と分枝が出来る事に関係しているのであろう。神経の連結は認識とか他の能力に関係するのであるがそれが使われていればそのままであるし、使われていないと消滅して行く。

幼児は環境の種類、強さに対しては全面的に両親に依存しているので神経連結はそのまま残る。十代では彼らは自分の世界を作り出す。「十代では自分の脳の発展を自分で決定する力を持つ。ある神経連結を残しいらない神経連結を自ら処分する」とギード氏は言う。「芸術をやるか音楽をするかあるいはスポーツ、ビデオゲームをするかによって脳はどの連結を残すか自ら判断して自ら改造して行く」

神経科学者が前頭葉を超えて更に研究を進めると面白い事が分かって来た。カリフォルニア大学のチームが7歳と16歳の19人を集めて脳のスキャンをして解析した。それで分かったのが頭頂葉と呼ばれる部分、ここは広範な各脳から集められた情報例えば音声、触覚、視覚のシグナルを統括総合する部分であるが、ここが十代半ばまで成長している。
白色物質と言われている長い神経繊維はまだ多分ミエリンに覆われている。ミエリンは脂肪性の物質で神経シグナルをより速く効果的に伝える役割を持つ。この結果全く異なる情報を理解する回路は16歳頃になるまで進歩を続ける。頭頂葉の灰色物質のピークは男子では12歳、女子では10歳で迎える。それから刈り取られて行く。

言語とか感情の所在地と考えられる側頭葉の灰色物質は16歳になるまで最大値に達しない事をギード氏が発見した。それから刈り取りが始まる。十代の少年が感情抑制が十分でないとしてもその理由が分かるわけである。ボストン郊外にあるマックリーン病院の研究によると多くの十代の若者が人の顔から感情を読み取る事が出来ない。大人の脳では人の顔に恐怖を読み取ると活発に活動するが十代の脳では不活発であった。彼らの感情脳は明るくなるが思考する部分は暗いままである。あたかも彼らの脳が視覚、感情、認識の各情報を統合出来ないようである。道理で少年に怒った顔で睨みつけてもさっぱり反応しないはずだ。

思春期の最中あるいはその後に起きる脳の変化にホルモンは関係しているのだろうか。まだこの研究は始まったばかりである。しかしある興味ある発見では女子の海馬と言われる部分、ここは卵胞ホルモンに反応する部分であり記憶を構成する所であるが少年より早く成長する。少年では小脳扁桃と呼ばれる部分、ここは男性ホルモンに反応する部分であるが少女より速く成長する。小脳扁桃は感情即ち恐怖とか怒りをつかさどる。

結論をすると実験から分かる事は十代の脳は子供の時に起きる大変化をもう一度繰り返す。即ち過剰生産と神経分枝の刈り取りである。ソーウェル氏によれば「脳は今まで考えられていたよりもっと成長してから大きな変化を遂げる」。大人になるとは単なる知識の習得だけでなくハードの変化即ち脳その物が変化するのである。この変化は部分的には外部からの刺激に反応している。大変人間的順応のように見える。これを自然が我々に与える二度目のチャンスと考えよう。


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